台湾工場を拠点にグローバル化を推進―「文化の違いを乗り越える」
営業、製造管理、海外営業、開発それぞれの職種で活躍している中堅社員3名に、フジボウの研磨材事業のグローバル化をメインに担当の詳細や仕事のやりがいについて話してもらいました。
Mさん
台湾富士紡精密材料股份有限公司
製造課課長、営業課課長
Wさん
フジボウ愛媛(株)
東京営業所 機能資材第3部
Tさん
フジボウ愛媛(株)
壬生川工場 技術開発課
半導体製造の核となる超精密加工用研磨材-
3名が手掛けている仕事とは
M: 私は台湾富士紡精密材料股份有限公司というフジボウ愛媛の子会社の台湾工場に勤務し、製造管理と営業を兼務しています。
W: 私はフジボウ愛媛機能資材第3部に所属しており、研磨材の営業を担当しています。
半導体の素材となるウエハーメーカーが担当です。主に国内の顧客が多いのですが、一部アメリカ、マレーシア、台湾等の海外顧客も担当しています。お客様の課題に対して解決に導くような製品を提案することがメインの仕事になります。
T: フジボウ愛媛技術開発課に所属、現在は壬生川工場に勤務しています。研磨材事業の中でも半導体向けの研磨パッドの開発を行っています。研磨パッドは大きく分けて「ソフトパッド」と「ハードパッド」に分かれており、私は「ハードパッド」という新規分野の開発担当です。パッドの開発、仕様の決定や評価、また顧客への提案までが一連の業務の流れとなっています。
3名それぞれが富士紡ホールディングスに入社したきっかけは
M: 新しいことに挑戦をするという方針に魅力を感じました。実は入社の面接官がフジボウ愛媛の現会長だったのですが、出身大学が同じで、面接中にローカルトークができたことで少し気持ちがほぐれました。
W: 私も、フジボウであればいろいろなことにチャレンジできるのではと思って選びました。大学では化学分野を専攻していたので、化学メーカーへの入社を望み、就職活動をしておりました。その中で富士紡ホールディングスは繊維メーカーで120年以上の歴史があり、なおかつ研磨材や化学工業品といった新しい分野で業績を伸ばしているところに魅力を感じました。
T: 私も伝統ある繊維メーカーでありながらも、その技術を応用して研磨材など新しい分野で活躍しているのが、決め手の一つですね。また研磨材事業に関しては新しいことにチャレンジできるということと、ユーザーごとにカスタマイズした製品を扱っていて、顧客に沿った「ものづくり」がこの会社ならできると思って入社を決めました。
それぞれの業務を進めていく上での
やりがいとは
M: 台湾人の方ときちんと意思疎通ができた、言葉が通じないながらも自分の考えが伝えられた、そういった時がやりがいになります。それが「中国語をきちんと勉強しなければ」というモチベーションにつながっています。
W: 自分が提案した製品で、顧客の課題が解決すると非常にやりがいを感じます。一回で上手くいくことはほとんどありません。しかし試行錯誤が多いほど、達成した時に大きなやりがいを感じますね。
T: ユーザーニーズや社内方針に沿って、日々開発に取り組んでいます。中には一筋縄ではいかない課題も多いですが、新しいものや、良いものが開発できた時は嬉しいです。また自分がかかわった製品がユーザーに採用された時にもやりがいを感じますね。
それぞれの業務を推進していく上での軸やモットーは
T: 私の軸は、顧客の評価スケジュールを意識し、スピード感を持って業務を行うことです。製造と連携してスケジュールを詰めたり、社内評価の日に向けて迅速に製品を加工したりするなど、工夫しています。また、営業部からの難しい要望にも、実現に向けてチャレンジする気持ちを大事にしています。
W: 確かに、こちらは頻繁に難しい要望を出していますね。毎回助かっています。私は、顧客の要望に対して「できません」と言わないようにするのがモットーです。たとえば、現状の製品で顧客の要望に応えられなくても、開発や製造と相談しながら、なんとか課題を解決できるように取り組んでいます。
M: 私も日本にいたときは、「できないと言わない」を信条にしていました。その気持ちはとても大切です。しかし、台湾に赴任して、少し考えが変わり、「できないものはできないと言う」という文化も大切だと感じました。
日本と台湾では文化の違いもあり、働き方に対する考え方が少し異なります。台湾の人たちも担当した仕事はもちろん責任を持ってやってくれます。しかし、彼らは日本以上にワークライフバランスの「ライフ」を重視しているのです。忙しい時は残業のお願いをすることもあります。しかし、前もってスケジュールを組むなど「個」を尊重しながら接するよう心掛けています。
司会: 日本でも、働き方改革など、一人ひとりを尊重するやり方に変わりつつありますよね。顧客の期待に応えること、でも無理をしすぎないこと。どちらも大切にしたいですね!
先端分野の顧客とやり取りする上での苦労や難しさ、工夫
M: 海外の場合、言葉の問題があり、こちらの主張がなかなか先方にうまく伝わらないという課題があります。
W: 顧客には独自のノウハウがあり、それらは企業秘密です。情報が少ない中で、いかに開発に必要な要件を理解し、最適な製品を提案するかが課題です。
司会: 課題に対し、どのように工夫していますか?
W: 顧客との製品についての対話をより技術的に深いレベルで行うことで、開発に必要な要件を顧客から明確に指定されなくても理解していくことができます。したがって自分の研磨や半導体に対する知識をもっと深める努力をしています。
司会: 知識があれば、相手も心を開いてくれるということですね。どう勉強していますか?
W: 特許の資料を読んだり、当社でも研磨試験を実施しているので、そこから得た知見を工場から教えてもらったりして勉強しています。
T: 私も、半導体業界の知識がまだまだ必要だなと感じています。顧客の要望の真意を推測しながら開発を進めていくのが難しいですね。特に海外の顧客ですと、言葉の問題もあり、行き違いなども生じます。あらかじめプランBを準備するなど、いろいろ想定して仕事をしています。
M: 顧客が求めているのは、研磨パッドそのものではなく、「フジボウの研磨パッドで自社の製品を研磨したらどうなるか」ですからね。ですから顧客からの要望に対し、その製品がより良くなることを想像する必要がありますよね。そこが難しいですが、やりがいがありますね。
司会: 困難へのチャレンジがやりがいにつながるわけですね。
M: そうですね。研磨機を触りながら、「顧客の求めていることはこういうことだろうな」と想像するのです。他の方たちも言っていた通り、想像力や知識はこの仕事には不可欠です。今はそのための経験値を、みんなで貯めているところです。人が変わっても引き継いでいけるよう、データのまとめ方なども気を付けています。
T: ノウハウを形にすることは、大切ですね。
司会: 属人化が良くないのは、どの組織にも言えますね。
フジボウの未来について
W: これまで海外の顧客とは直接訪問して打ち合わせをすることが多かったのですが、訪問できないタイミングでも、コロナ禍後に急速に普及したウェブ会議を利用して、より密接にやりとりできるようになりました。頻度を高めることで、提案や開発のスピードアップを図れ、海外でのシェアをより大きくできる可能性が出てきたと感じます。あとは、世界的に見て半導体の製造は台湾が拠点となってきています。フジボウでも台湾工場が重要になってくるのではないでしょうか。
M: 確かに台湾にいると、それを感じます。台湾に製造拠点を作ったということはグローバル化という点で非常に良かったと考えています。良い製品を作り、それを武器に世界に羽ばたいていきたいですね。台湾だけではなく、米国、中国などの情報も収集しながらさらなるグローバル化を目指します。
今後の目標・夢は何ですか?
W: 私は海外の担当になってまだ間もないので、海外のシェアをもっと伸ばしていきたいです。頑張りますよ!
M: 台湾の工場はまだ稼働開始したばかり。基盤づくりに少しでも力になれたらと考えています。
T: 今私が担当している「ハードパッド」事業は、フジボウとしてはまだ新規事業です。これを、いずれはフジボウのソフトパッドと肩を並べる看板事業のひとつにまで成長させたい、これが私の夢です。
司会: 研磨材と、そこで活躍するみなさんの近い将来がますます楽しみになってきました。本日はありがとうございました!