TCFD提言に基づく情報開示
富士紡グループは、低炭素化社会実現に向けた気候変動対応を経営上の重要課題と認識し、2021年11月に気候変動に関する情報開示の指針となるTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース・Task Force on Climate-related Financial Disclosures)※提言に賛同を表明し、気候変動に関連するリスクと機会への対応について、以下の通り、TCFD提言に沿って、気候変動に関連する重要情報を開示しています。
1.ガバナンス
当社グループは、重要な環境関連目標や取り組みは社長が委員長を務める「ESG 推進委員会」で決定しております。年2回開催される「ESG推進委員会」において、気候変動に関するリスクや機会を特定し、気候変動課題をESG推進委員会の分科会のひとつである「環境分科会」で取り組み、重要度に応じてESG推進委員会、経営会議、取締役会に諮る体制でマネジメントを行っております。
取締役会は、ESG推進委員会等から気候変動課題に関わる経営全般にわたる重要な方針・施策の報告を受け、最終決定するとともにその進捗を管理監督しております。
2.リスク管理
当社グループは、気候変動関連リスクを含む全社的なリスク情報を把握し、管理する体制の構築・整備することに取り組んでおります。リスクマネジメント体制においては、リスク管理委員会を設置し、リスク情報を収集・分析して、リスクが顕在化した場合の対策を講じています。
また、ESG推進委員会においても、気候変動関連リスクおよび機会を発生可能性および金額的重要性の観点から特定し、その対策を講じておりますが、リスクに対する具体的な取り組みにおいては、「環境分科会」が各事業会社と協働して、対策を検討・実行しております。
重要度に応じて、リスク管理委員会とESG推進委員会が、取締役会や経営会議に報告するなどして、気候変動に係るリスクマネジメントに取り組んでおります。
■富士紡グループ気候変動対応に関する体制図(ガバナンスおよびリスク管理)
3.戦略
(1)気候変動関連のリスクと機会の特定
当社グループでは、気候変動関連のリスクと機会は、中長期にわたり事業活動に影響を与える可能性があると認識しております。外部環境の変化や様々な状況下におけるリスクや機会を考慮するため、1.5℃~2℃未満シナリオ、4℃シナリオの複数の将来シナリオを想定し、2050年時点における当社グループの主要3事業において、重要な財務への影響を与える可能性のあるリスクと機会の洗い出しを行いました。
今後も引き続き当社グループを取り巻く外部環境の変化に応じて、重要なリスクと機会の見直しを適宜行い、戦略に反映させてまいります。
(2)シナリオ分析の前提
対象事業 | 研磨材事業、化学工業品事業、生活衣料事業 |
シナリオ | 1.5℃~2℃未満シナリオ、4℃シナリオ |
分析時点 | 2050年時点において想定される重要な財務影響 |
・1.5℃~2℃未満の世界では、温室効果ガス削減のための規制が強化され、低・脱炭素化が進むことに伴う事業への影響、移行リスクが高まることが考えられます。
・4℃の世界では、規制などの移行リスクの影響は小さいものの異常気象などの物理的リスクが高まることが考えられます。
当社グループのシナリオ分析においては、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)やIEA(国際エネルギー機関)を参考にしております。
(3)リスク・機会が事業・戦略・財務計画に及ぼす影響
当社グループでは、2021年にCSRD(Corporate Sustainability Reporting Directive)に沿って「ダブル・マテリアリティ」という考えに基づいて、5つのマテリアリティを定めております。そのうち「気候変動への適応」をマテリアリティ(重要課題)の1つとして掲げ、脱炭素社会に向け事業活動における環境負荷の軽減に取り組むとともに、将来生じると予想される気候変動が企業へ与える影響にも適切に対応いたします。
1.5℃~2℃未満シナリオ、4℃シナリオを前提として、当社の主要事業に重要な財務影響を与えるリスクと機会を分析し、リスク低減および機会活用に向けた対策を検討しました。
(4)リスク・機会に対する戦略(移行計画)、レジリエンス
当社グループは、今後もTCFD提言の枠組みを参照しながら、移行リスクに対する1.5℃~2℃未満シナリオと物理的リスクに対する4℃シナリオを開示していくことで、移行計画等を中長期の視点からの経営戦略に反映させてまいります。
(5)主要なリスク・機会とその対策
当社グループにおける気候変動に関連する主要なリスク・機会とこれに対する影響度と対策を以下のとおり、整理しました。発現時期については、短期・中期・長期と時間軸を設け、影響度については、利益に対する影響の大きさにより大中小の3段階で表現いたしました。
発現時期 :「短期」1年以内、「中期」1年~5年、「長期」5年超
影響度 :「大」5億円超、「中」1億円~5億円、「小」1億円以下
<リスク>
移行リスク(1.5℃~2℃未満シナリオで最も顕在化すると想定)
物理的リスク(4℃シナリオ等で最も顕在化すると想定)
<機会>
4.指標と目標
当社グループの温室効果ガスは、エネルギー起源は CO₂(二酸化炭素)のみであり、CH₄(メタン)、 N₂O(一酸化二窒素)等のガスは排出していません。
今後も生産拡大によるエネルギー使用量の増加が見込まれますが、再生可能エネルギーへの転換を推進し、さらなる温室効果ガスの排出削減に励みます。今後は、目標設定に向けた取り組みや環境に一層配慮した事業活動を継続することにより、脱・低炭素型社会実現への貢献と企業価値向上を図ります。
【Scope別排出量推移】
(単位:千t-Co₂)
2019 | 2020 | 2021 | 2022 | 2023 | |
---|---|---|---|---|---|
Scope1 | 22.2 | 22.0 | 24.8 | 27.3 | 25.5 |
Scope2 | 35.4 | 33.8 | 35.5 | 35.6 | 34.3 |
Scope1+2 | 57.6 | 55.8 | 60.3 | 63.0 | 59.9 |
Scope3 | – | – | 100.6 | 109.9 | 94.0 |